【校務分掌とは?】自分に合った決め方から、その大変さまで全て教えます
「校務分掌って何?」
「教務部と総務部の仕事の違いは?」
「どうやって決めればいいの?」
「校務分掌の中でオススメはある?」
このような疑問に答えます。
教員の仕事には授業だけでなく、校務分掌というものがあります。
ここでは、あまり世間に知られていない校務分掌の仕事内容について、詳しく説明していきます。
- 校務分掌とは
- さまざまな分掌について【仕事内容解説】
- 自分に合った校務分掌の選び方…良い方法は?
- 校務分掌でよくある質問
校務分掌とは
校務分掌(こうむぶんしょう)とは、学校を運営するのに必要な仕事・事務を、手分けして受け持つことです。
簡単に言えば「職員間の係り分担」ということです。
校務分掌を省略して「分掌」と言うことが多いです。
3大分掌
校内の仕事には、3大分掌と呼ばれる仕事があります。
「教務部」、「進路指導部」、「生徒指導部」の3つを合わせて3大分掌と呼びます。それぞれの仕事内容を紹介しましょう。
教務部
学校の運営は、全てこの部で決まると言っても過言ではありません。どれも力を抜けない仕事を担当します。
教務部の主な仕事内容はこちら ↓
- 学校説明会の運営・学校宣伝
- 生徒成績処理・成績表作成
- 時間割・年間行事&月間行事予定作成
- 授業時間の確保・授業公開の推進
- 定期考査の監督者割・テスト返却日程の作成
- 入学者選抜の運営・合否発表
- 指導要録の作成
- チャイムの管理・消耗品(チョーク・再生紙など)の管理
特別時間割(文化祭前などに普段と異なる時間割になるもの)を作る際、授業の年間時間数がどれも平等になるように考えて作らなければならず、細心の注意を払う必要があります。
そのほか、教務部で振られた仕事を円滑にこなすことができなければ、学校全体がストップしてしまいます。そのため、教務部の仕事は優先的に取り掛からなければならず、教員の精神的負担が大きいです。
さらに、これらの校務が出来て当たり前だと思われているので、教員からの評価はとても厳しいです。一方、教務の仕事を通して生徒と関わることはほとんどないため、子供たちから感謝されることも滅多にありません。
しかし、学校運営が上手くいくかどうかを左右する重要な校務であるため、やりがいは大きいと思います。運営に携わることが好きな方、責任感の強い方にオススメです。
進路指導部
生徒たちの将来の進路先に直結する部です。子供たちの成長に合わせて、入学から卒業までの間、進路行事を企画・運営します。
進路指導部の主な仕事内容はこちら ↓
- 進路講演会の企画・運営
- キャリアガイダンスの企画・運営
- 就職説明会の企画・運営
- 到達度チェックテスト(学力テスト)・模試の実施・運営
- 指定校推薦の取りまとめ
- 推薦入試・就職希望者の面接練習
- 進路関係の雑誌・ポスターの掲示
- 進路室当番・大学広報者来校対応
教育関係の業者や就職担当の方と一緒に仕事をすることが多くなります。
進路室当番では、アポなしで訪れる大学の広報者の対応をしたり、資料室の整理を行います。
また、放課後には進路関係の相談に来る生徒の対応や、進学補講、面接指導などが入ることがあります。そのため、推薦入試や就活のピークを迎えると、19 時過ぎまで勤務することが当たり前になります。
進路行事では、他の部の先生にも協力をいただくことが多くあり、他の教員の負担を増やしてしまうので、文句を言われることがあります。しかし、希望進路の実現のために生徒のサポートを行うため、生徒から感謝されることは多いです。
進路指導部はまさに芸能事務所のマネージャーのような仕事だと思います。陰ながら学生達のデビューを支え、正しい道へ進めるようにあらゆるリソースを駆使します。
対人関係の仕事が好きな方、人の相談に乗ることに自信のある方にオススメです。
生徒指導部
学校内外の治安維持のためには必要不可欠な部です。生徒を厳しく指導するだけではなく、意外な学校行事の運営も行います。
生徒指導部の主な仕事内容はこちら ↓
- 登下校指導・制服指導
- 校内・敷地内巡回
- 特別指導・内容審議
- 交通安全講座の企画・運営
- 薬物防止教室の企画・運営
- 非行防止教室の企画・運営
- 近隣の方々からのクレーム対応
長期休み直前に行われる非行防止集会や薬物防止講演会などの企画を担当します。
事前に講師の手配や、学校事情に合った講演内容の打ち合わせなども行います。
また、特別指導はいつ起こるかわかりません(最近では SNS のトラブルまで特別指導対象)。
緊急会議が開かれ、放課後に急に呼び出されることが頻繁にあります。
生徒に校則を守らせるために厳しく指導をする立場なので、生徒から嫌われる役になってしまいます。しかし、嫌われ役の先生がいるからこそ学校内の秩序が保たれますので、他の先生からは感謝されることが多いです。
生徒指導部はまさに鬼コーチのような仕事です。心を鬼にし、生徒を指導します。
仲の良い相手でも悪い時には悪いと注意できる方にオススメの仕事です。
さまざまな分掌について【仕事内容解説】
3大分掌以外にも、学校内で活躍する分掌はたくさんあります。
また、学校ごとに分掌の構成は異なります。簡単にまとめます。
総務部
入学式・卒業式・離退任式や、始業式・終業式といった、学校では欠かすことのできない式典行事を総括します。
また、保護者会との連絡を密に取り合う窓口の役割を担います。保護者会の広報と協力をし、「学校だより」や「保護者だより」を作成します。
学校の広報のために、様々な行事で写真撮影も行います。
生徒会部
生徒が楽しむ行事(球技祭・文化祭・体育祭・3年生を送る会など)の企画・運営を行います。
また、各部活動に分配され活動費の分配、決済なども行います。
夏休み明けに文化祭があれば、4月から9月までずっと文化祭関係の書類作成・代表会議などを繰り返します。
文化祭が終わってからは、会計報告のための書類作りに追われます。意外にも多忙な部と言えます。
管理部
校内の美化活動をまとめます。掃除計画の作成(全校清掃・大掃除など)、掃除道具の管理、ゴミ集積場の管理や全校ワックスがけの予定調整などを行います。
また、避難訓練を企画し、最低でも年に一回実施します。エアコンやストーブの使用についてもこの部が全て管理します。
保健部
健康診断に関わるものを行い、予定を調整します。歯科検診・内科検診・胸部 X 線撮影、耳鼻科検診など、授業が行われている間に実施することが多いです。
どのタイミングで、どの順番でクラスを動かせば効率が良いかなどを検討します。また、インフルエンザや感染性胃腸炎などの感染病が蔓延し始めたら、それに対する予防を呼びかけ、保健だより(プリント)を作成・配布したりします。
情報教育部
校内に敷かれる情報器具の管理やPC室の管理を行います。
校内に教員専用の Wi-Fi が飛んでいたり、各教室にプロジェクター&スクリーンが設置してあるのは、この人たちの活躍のおかげです。
情報器具関係で困ったら、情報教育部の方にすぐ聞きにいきましょう。
国際部
短期留学の斡旋や交換留学生の受け入れを担当します。
また、在校生と留学生をどのように関わらせていくのかを考案し、実行していきます。普通科のみの学校にはあまり見られない部ではないでしょうか。
上記で紹介したもの以外にも、学校ごとに様々な分掌が存在します。
自分に合った校務分掌の選び方…良い方法は?
校務分掌は選べない?
初任者・新着任の先生は、分掌を選ぶのは難しいです。
その理由は、学校の運営上、管理職が新しく来る先生方の分掌を後回しにすることが多いためです。
それでも、自分の希望は伝えましょう。3月に着任先の管理職と面談をするはずです。そこで、自分は学校でどのような仕事をしていきたいかをはっきりと述べてください。
管理職は、あなたの希望から「適した分掌」に配属してくれるでしょう。
自分に合った分掌はどれ?
仕事には向き・不向きがあるように、分掌にも向き・不向きがあります。
例えば、温厚な人が「生徒指導部」に入り、ガンガン生徒を指導する。これも経験として大切なことかもしれませんが、その人がもし考えることが好きなのであれば「教務部」として、学校運営のために頭を使ってもらう方がいいでしょう。
校務分掌の決め方…おすすめは?
自分の適正がわからない場合は、興味をもった分掌を選びましょう。参考までに、それぞれの校務分掌がどういった方にオススメか、一覧表を作ってみました。
校務分掌 | こんな方にオススメ!! |
---|---|
教務部 | 学校の運営に興味がある方 |
進路指導部 | 誰かのサポートをするのが好きな方 |
生徒指導部 | 仲の良い人にも厳しく出来る方 |
総務部 | SNS などの情報発信が好きな方 |
生徒会部 | イベント運営が好きな方 |
管理部 | 部屋の掃除が得意な方 |
保健部 | ヘルスケアが好きな方 |
情報教育部 | ガジェットに詳しい方 |
国際部 | 英語や海外旅行が好きな方 |
分掌は1つだけを経験するのではなく、全種類を経験してほしいです。
分掌が全て分かることで、学校の仕事の流れを広く、多角的に理解することができますので。
初めのうちは分掌の仕事が何が何だかわからないものですが、1年経験すれば流れを掴むことができます。
可能であれば担当した分掌を3年は経験し、まずはその分掌を極めて欲しいです。そうすれば生徒の入学から卒業までの仕事の流れを掴めますので。
「やりたくないからやらない」のでは、いつまで経っても自分の成長につながりません。分掌の仕事を経験していくうちに、自分の合った分掌がわかります。
とにかく様々な経験を積んで、自分の適性を見出しましょう!
校務分掌でよくある質問
校務分掌の違いで仕事量は変わる?不公平?いらない?
学校の仕事を細分化した結果、分掌によって仕事に偏りが生まれてしまっています。「それなら分掌なんて無くしてしまえばいいのでは?」と考えたくなりますね。
しかし、本記事の初めにも明記した通り、分掌とは「学校を運営するのに必要な仕事・事務」です。それぞれの分掌をなくしてしまえば、学校が上手く回らなくなるため、学校の運営のためにも、分掌は必要だと思います。
分掌ごとに負担が違う、不公平だという意見はごもっともです。
仕事の負担に差異があることは当たり前なので、負担が大きいことが本当に嫌であるならば、負担の軽い分掌を探せば良いと思います。
個人的な意見ですが、せっかくやるのであれば、自分が楽しいと感じられる、やりがいを感じられる分掌を探すのが一番だと思います。
小学校・中学校・高校で校務分掌に違いはあるか
それぞれの学校に適した分掌を設置することができるので、様々な部が設けられることはありますが、どのカテゴリーでも校務分掌という基本的な考え方は同じです。
しかし、小・中学校と高校では大きな違いがあります。
小・中学校では分掌の棲み分けがしっかりとされておらず曖昧です。なぜなら、教員数が少なくなってきている中、仕事量は変わらないので、1人で2つ以上の分掌を掛け持つことがあるからです。
生徒指導部でなくても生徒指導をしたり、進路指導部でなくても生徒の 1 人 1 人の進路先決定に大きく関わっていかなくてはなりません。
一方、高校では専門的に分掌の仕事を行うことができます。基本的に、1 人に対して1つの分掌のみ割り振られます。
分掌主任とは
それぞれの分掌には「主任」が存在しており、その部の方針を決める大きな役目を担います。毎日が忙しいため、基本的には学年からは外してもらい、その仕事に集中します。
担任の職を外され、生徒よりも学校運営のために働くことになります。他校との擦り合わせ・情報共有をする必要があり、出張が多くなるため、人気はありません。
なお、分掌主任になると給料は数千円だけ上がります。
直接的に生徒と関わることが限りなく少なるため、子供たちと触れ合うことが好きで教員になった人にとっては苦痛な仕事ということで、自主的に分掌主任に就くことは殆どありません。管理職からしつこくお願いをされ、渋々就くことがほとんどです。
校務分掌は大変?忙しい?
とにかく忙しいです。
教員は授業や担任業をこなしながら、並行して分掌で任された仕事を行っていきます。適度に空き時間はありますが、それは休むための時間ではなく、分担された仕事をこなすための時間です。
毎日がせわしなく過ぎていき、気づいたら勤務時間になるということが多いです。
校務分掌の法的根拠は?
ブラック部活動問題で教員の働き方が問題視される中、校務分掌に法的根拠はあるのか(つまり、法律で明確に定められた仕事なのか)を問われることが多くなってきました。
結論として、校務分掌の法的根拠はあります。
こちらのサイトに詳しい説明がありますので、興味がある方はチェックしてみて下さい。
参考:小学校の組織図(例)からみる校務分掌
経済産業省のホームページに小学校の組織図例が掲載されています。
ここに、組織図の中で校務分掌がどのような立ち位置であるかを確認することができますので、ぜひ一度チェックしてみましょう。
組織図はこちらから。
まとめ
校務分掌について説明しました。
人によって学校内で分担されている仕事は様々です。実際は各分掌でそれぞれの係を割り振られ、更に細かい作業を行っていきます。
教員には授業や校務分掌以外にも数多くの仕事が存在し、意外な業務に追われていたりします。詳しくは次の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
WRITTEN BY
りっすん@英語教師
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