アクティブラーニング型授業の組み立て方【成功までのステップ】
「アクティブラーニングって何?」 「アクティブラーニンングの授業をするのって難しそう…」 「なかなか今までの授業スタイルから抜け出せない…」
こんな悩みにお答えします。
教育現場では、もう聞かないことがないくらい「アクティブラーニング」という言葉が広まっていますね。
アクティブラーニングと聞くと「難しそう」「グループワークとかしないといけない」と思いがちですが、そんなことはありません。
この記事では、「アクティブラーニング型授業の作り方」について触れたいと思います。
アクティブラーニングとは
そもそもアクティブラーニングとは何なのでしょうか?
文部科学省のアクティブラーニングの定義
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。(引用:用語–文部科学省)
文部科学省は、アクティブラーニングをこのように定義しています。
ここでポイントになるのは、教師・生徒の双方向による授業であることです。
教師がどんなにうまく授業をして、生徒が「あ、なんかわかってきた!たのしくなってきた!」となっても、これは教師からの一方向型授業なので、アクティブラーニングとは言いません。
実は、高校の授業では、いまだに教師主体の授業が主流です!
一方向型授業から双方向型授業へ
生徒は座って先生の説明を黙って聞き、教科書を読んだりノートに黒板の文字を書き写したりということを伝統的にしてきました。
言われたことだけをやっていては、自分で考えてることをしなくなります。
「これではまずい!」ということで「これからの授業では、生徒に考えさせていこう」となったわけです。
そのため、ただ黙って座っているのではなく、先生の投げかけに対して自分で考え、積極的に発言していき、他者と一緒に協力することを授業で求められるようになってきました。
今までの授業 (一方向型授業) | アクティブラーニング (双方向型授業) | |
---|---|---|
教 師 | だまって聞かせる | 問いを投げかける |
生 徒 | 教科書を読む ノートに書く | 他者の意見を聞く 自分の意見を話す |
なぜアクティブラーニングが必要なのか
次の理由です。
- 黙って講義を受けるだけでは理解が5%のみ
- 思考力・表現力・判断力を育てられない
① 黙って講義を受けるだけでは理解が5%のみ
「ラーニングピラミッド」について紹介します。
(引用元:名古屋商科大学)
これは、アメリカ国立訓練研究所が発表した有名な研究結果です。
この表でわかる通り、ただ講義を受けるだけでは授業内容の5%ほどしか頭に残りません。反対に、グループで討論をしたり、自分で体験したり、他者に教えることでより高い割合での定着が見込めます。
② 思考力・表現力・判断力を育てられない
センター試験が廃止になり、高大接続改革が起きた理由です。
今までの日本の教育では、知識詰め込み型の授業が主流でして、知識汎用型授業ではありませんでした。これにより、「知っているけど使えない・表現できない」状況におちいり、世界から遅れを取ってしまいました。
覚える知識→使える知識へシフトしようとなったわけです。であるならば、授業も今まで通りではいけませんよね?
これに関連しては、下記の記事で詳細を紹介しています。ぜひ参考にしてください。
誰でもできるアクティブラーニング授業【一工夫を加えるだけ】
アクティブラーニングで大切なことは次の通りです。
【教師】 答えを教える → 質問を投げかける、サポートする
【生徒】 答えを待つ → 自分たちで答えを見つける、他者と協同する
これができれば、誰でもアクティブラーニング授業ができます。
具体的な手法としては、次のようなものがあります。
- ペアワーク
- グループワーク
- ディスカッション
- ディベート
- 授業の振り返り
「授業の振り返り」は特に効果的です。
授業終わりに、その日の授業をまとめさせ、2分間で相手に概要を伝えるだけです。
相手に伝えるためには、自分で理解していないといけませんよね。 なので、その日の授業を一生懸命復習してくれます。
しかも、ラーニングピラミッドにもあったように、相手に伝えることによって授業内容の定着も見込めます。
たった2分間、授業の振り返りを相手に発表するだけですが、これだけでも十分アクティブラーニングになります。
今までの授業スタイルから抜け出せない。。。
そんな方は、最後に生徒たちで振り返る時間を設けてみてはいかがでしょうか?明日からでも実践できるはずです。
カタチだけではダメ
「ペアワーク」「グループワーク」はアクティブラーニングに入りやすい手法です。
しかし「ペアワーク」「グループワーク」=「アクティブラーニング」ではありません。
あくまでも、授業を通して「生徒が主体的に考える・他者と共同する」ことが大切なのです。
ペアワークにすればOK。グループワークにすればOK。と考えがちですが、そのうち生徒もそのスタイルに慣れてしまい、寝る・無駄話をする生徒が増え始めます。
大切なのは圧倒的にコンテンツです。
内容なしでカタチにこだわってしまうと、授業が崩壊します。
なお、授業の組み立てで大切なことは、次の記事で紹介しています。
アクティブラーニングの実践については、下記の本に詳しく書かれています。
ワークショップ型の授業をメインに、実践方法が具体的に書かれています。新任の先生や教育実習生の方は一度読んでおくべき一冊です。本も分厚く無いため、さくっと読めます。
② アクティブ・ラーニング対応 わかる! 書ける! 授業改善のための学習指導案 教育実習・研究授業に役立つ
指導案の書き方を学びながら、アクティブラーニングのきっかけを掴むことができる一冊です。マンネリな授業を見直したい方にとっておきの本です。
いきなりアクティブラーニングは無理?【成功までのステップ】
では、明日からさっそくアクティブラーニングを実施しよう! と思った方。
ちょっと待った!
アクティブラーニングをいきなり実施しようとすると失敗する恐れがあります!なぜなら、成功させるためには「段階」を踏まなくてはいけないからです。
成功させるためのステップ
アクティブラーニングを成功させるには、次のような授業段階があることを理解しなければなりません。
順 序 | 型 | 授 業 | 自主性 |
---|---|---|---|
① | 習得型 | 講義・実習・習熟型授業 | 低 |
② | 活用型 | 課題解決型授業 | 中 |
③ | 探求型 | 問題解決型授業 | 高 |
①講義・実習・習熟型授業
基礎的・基本的な知識を身につけさせるための段階です。
今までの授業スタイルのように、教師が中心となって生徒に知識を教えていく授業です。基礎・基本を身につけさせるためには不可欠な段階です。
②課題解決型授業(準アクティブラーニング)
教師が課題を与え、解決方法を示す/解決方法を考えさせる段階です。
基礎的な知識を活用して、問題を解きます。教師のサポートを受けながら、知識の活用をすることによって、より知識の定着が見込まれます。
③問題解決型授業(アクティブラーニング)
与えられた課題、もしくは自分で見つけた問題に対し、基礎・基本的知識を使いながら課題を解決へと導く段階です。
「習得型の授業」は重要だ!という意見は、アクティブラーニング型授業の重要性と矛盾しているように思われますが、「習得型」の授業を軽視するのは、本末転倒です。
生徒自らが「課題を見つけ解決へ導く」には、絶対的に知識が必要になります。これなしでは、アクティブラーニングは語れません。
3ステップをまとめた理想な授業【振り返りが大事】
毎回の授業を、このように展開することが理想です。
【導入( 5分)】 | 前回の復習・本論に関連した導入 |
【本論(40分)】 | ①習熟型…知識を教える ②活用型…知識を使わせる ③探求型…考えさせる・共同する |
【結論( 5分)】 | 授業の振り返り2分スピーチ |
ふと思ったのですが、数学の授業って、まさにこの流れじゃないですか?
①で公式を覚えさせて、②で解き方を教えて、③では演習問題・応用問題を自分で解く。
私はいつもこんな感じで授業を受けていた気がします。
こう考えれば、アクティブラーニング型授業もそこまで難しくないのではないでしょうか?
時間マネジメントが勝負
理想の授業を展開するには、時間をどれだけコントロールできるかがポイントです。新しい知識を教えるとき、どうしても解説で時間が取られたりしますよね。
私は、黒板に板書をする時間を短くするために、パワーポイント・プロジェクター・スクリーンを使っています。あらかじめ、パワポのデータを作成するのに時間がかかりますが、授業中では解説部分がスムーズに終わります。
どこで時間をかけるのか、どこの時間を短くするのかは、各先生方の工夫にかかっていると思います。
1時間ごとに分けてもOK
どうしても時間が足りないということもありますよね。単元によっては、3ステップを1コマにまとめることが難しいものもありますよね。それならば、1時間ごとに1ステップをこなすように組み立ててもいいと思います。
その場合、習熟型授業の場合にはなかなかアクティブラーニングが展開しにくいと思いますので、注意してください。
できることから始めよう
急に授業のスタイルを変更して、今まで慣れてきた方式からガラッと変えることが難しいと思います。また、生徒も混乱するでしょう。
慌てずゆっくりで構わないと思います。自分ができることから、徐々に始めていきましょう。
WRITTEN BY
りっすん@英語教師
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